デジタル技術を用いた矯正ってなに?

口腔機能や整容面の改善をめざす矯正治療。デジタル技術の飛躍的な進歩に伴って、口腔内スキャナーや3D画像が活用されています。情報の共有や治療精度の向上に加え、患者さんの負担軽減にも大きな役割を果たしています。

デジタル技術は、どんな場面で使われますか?

検査や治療計画の検討、患者さんへの説明などで活用されています。

 デジタル技術の普及により、口腔内の計測や詰め物などの製作には、型取りが不要な口腔内スキャナーが使われるようになりました。得られたデータを歯科用CTなどの画像検査データと組み合わせて作成する3D画像では、現状から治療経過、治療後の状態を画面上でシミュレーションし、手術方法などを検討することができます。患者さんへの説明でも、文字や言葉だけではわかりにくい骨や歯の移動、口周りの変化などを、画像として見ていただけるように。またデジタル化した検査データや治療計画は他科と共有しやすく、長期保存にも適しています。

患者さんにはどんなメリットがあるのでしょう。

検査や治療の負担が軽減し、説明もわかりやすくなりました。

 印象材による型取りは不快感が強く、特に嘔吐反射の強い方やお子さん、障害のある方では実施が難しいこともありました。口腔内スキャナーは口腔内の表面を照射するだけで精緻なデータが得られますし、中断・再開が可能で、検査時間も大幅に短くなりました。また、立体的な画像データを用いた説明では、「どこまで治療をしたいのか」あるいは「なぜこの治療にはリスクがあるのか、治療が難しいのか」などの複雑な説明も、可視化されたことで理解しやすいという特徴があります。デジタル技術は、安全で安心できる医療につながる技術です。

大学病院での診療でデジタル技術が担う役割は?

治療精度の向上や医療効率化に加え、研究への活用も進んでいます。

 当科の患者さんでは治療の難易度が高いことも多く、治療計画や手術の具体的な内容は1症例ずつ検討を行います。口腔外科などの院内他科や、時には小児科や形成外科など院外の医師も参加してカンファレンスを行うので、持ち運ぶ必要がなく画面上でいつでも共有できるデジタルデータは、スムーズな連携を支え医療の効率化にも寄与しています。手術に関しては、画面上で手術計画を検討する3Dデジタルサージェリーに加え、デジタル上のガイドを使って安全な手術をめざせる手術ナビゲーションシステムの開発や導入も進めています。
 また、当科で蓄積された膨大な診療データは、病気の予防・予測に関する臨床研究にも応用されています。口唇裂・口蓋裂は先天性の病気で、遺伝子に要因があると他の先天性疾患を併発することもありますが、構築中のデータベースを解析して原因となる遺伝的要因などがわかれば、予想される経過や合併症に配慮しながら、より安全に治療を進められる可能性があります。さらに当科の患者さんの中には、症状がありながら既存の病名が当てはまらず、原因や治療法もわからない「未診断疾患」の方もいます。そこで「未診断疾患イニシアチブ(IRUD)」という全国規模の研究プログラムに参加し、データベースを活用した連携や研究を進めています。

インタビューに答えてくれた人