[ 編集者:歯学部附属病院 2014年11月11日 更新 ]
ヒポクラテスは「歯を抜去すると関節炎が治癒することがある」と書き残しました。 お口の病気と全身疾患の関係は古代ギリシャの人々も気づいていたようです。
動脈硬化、糖尿病、早産・低体重児出産、誤嚥性肺炎などの全身疾患が歯周病と関係していることがだんだんと明らかになってきました。
世界の成人の半数以上が罹患している歯周病は、歯垢(デンタルプラーク)に住んでいる歯周病菌による感染症であり、歯を取り囲む歯周組織の慢性炎症です。
病原性の高い歯周病菌が住みついている場合、あるいは多量のデンタルプラークが歯の周りに蓄積している不潔状態では、歯周病菌が歯肉の毛細血管に侵入して、血流に乗り全身の臓器に遠隔感染して、全身疾患の発症・進行の原因になっていると考えられており、全容解明に向けて現在精力的に研究が進められています。
1980年代後半より米国で開始された多数の疫学研究から、歯周病と全身疾患(心・血管疾患、糖尿病、早産・低体重児出産、誤嚥性肺炎など)との関連性が示されました(左図)。
日本でも、同様の調査結果が得られています。また、動脈硬化の血管組織から、口からやって来たと思われる歯周病菌が検出されています。
糖尿病などの生活習慣病と呼ばれる疾患でも、歯周病が進行している場合は、全身病態が悪化する頻度が高いようです。
歯周病と全身疾患と因果関係を明らかにするためには、今後の研究が必要ですが、口の健康が全身の健康に影響することは確かであると考えられます。