[ 編集者:歯学部附属病院 2020年7月2日 更新 ]
インプラントとは、歯の失った部位に、天然歯の根の部分の代わりをする人工歯根を入れて、再び咬む機能を回復させる治療です。従来の入れ歯と異なり、天然歯のように咬むことができるようになります。グラついたり、歯と歯ぐきに食べ物が挟まったりなど、「もう入れ歯は我慢できない」という声が多く聞こえるなか、魅力的な治療方法として、期待を集め、今では、多くの方がインプラント治療を受けています。
また、当院では「歯とあごの骨をこれ以上に失わないため」の治療をすすめていますが、その中でインプラントは重要な役割を果たしています。失った歯を取り戻すだけでなく、残った天然歯やあごの骨への影響を考慮してもインプラントはとても有効な治療なのです。
天然歯のように咬むことができる他、多くのメリットをもつインプラントですが、デメリットをよく理解することも大切です。主なメリットとデメリットは以下の通りです。実際の治療においても、医師とよく話し合い、綿密な検査を行い、インプラント治療が最適な治療なのか、または、治療そのものが可能なのかを決めます。
●メリット
1)両側の歯を削る必要がない
2)しっかりと固定されるので、歯と同じように噛める
3)周囲のあごの骨が守られる
●デメリット
1)あごの骨が十分になければ利用できない
2)しっかりと清掃しなければ歯周病と同じようになる
3)外科手術が必要となる
4)治療期間ならびに費用がかかる
1)1本だけ歯を無くした場合
生まれつき歯が少ない方や、事故などで歯を失った方は、少なくありません。1本だけ歯を無くした場合でも、インプラント治療を利用すれば、従来の入れ歯やブリッジ治療のように、周囲の健康な歯を削って修復する必要はありません。
2)数本の歯を無くした場合
数本の歯を無くす、歯牙欠損(しがけっそん)の多くは、奥歯から始まるのが特徴です。このような場合、独立したインプラントを数本使う治療法が最適です。また、インプラントの歯も天然歯の状態に影響されることなく、長年にわたって使用することができます。
3)上あご、または下あごの全てを無くした場合
上下のあごのどちらかの歯を完全になくした場合、総入れ歯を使う方法では、お口の中で入れ歯が動きやすいことが問題としてありました。また、歯ぐきやあごの骨がやせて合わなくなることもあります。このような場合、1本から数本のインプラントを使い、入れ歯をあごの骨に固定することで、安定させることができます。入れ歯が動いてしまうなどの不安がなくなり、安心してお食事やお話しができるようになります。
●Step1 診査と治療計画
充分な診査と綿密な治療計画を立てた上で、患者様に合わせて治療を進めてゆきます。当院では CT撮影を行い、独自に開発したコンピュータシステム(iCAT といいますが、これは現在全国的に利用されています)を利用して、術前に細かく調べた上で埋め込む位置を決定します。
●Step2 人口歯根(フィクスチャー)の埋入
局部麻酔のもと、あごの骨にチタン製の人口歯根(フィクスチャー)を埋入します。このフィクスチャーが新しい土台となります。
●Step3 骨との結合
人口歯根を埋入したあと、歯ぐきで覆い、オッセオインテグレーション(人口歯根と骨が結合すること)が得られるのを待ちます。通常の治療期間は3~6ヵ月。この間は仮の入れ歯を使用することができます。
●Step4 人口歯と人口歯根の連結部の連結
人口歯根が完全にあごの骨と結合したら、義歯/歯冠の土台(アバットメント)を連結します。この状態で歯ぐきが治癒するまで1~6週間ほど待ちます。
●Step5 入れ歯や補綴物を作る
歯ぐきの治療後、補綴物(ほてつぶつ)を作るための型取りをします。歯の形や色などを決めて補綴物(ほてつぶつ)が完成したら、新しい土台(アバットメント)に装着、固定します。
STEP1~STEP5まで個人差はありますが、1~2年間ほどかかります。